今回は、Webデザイナー・グラフィックデザイナーにとって避けて通れない「トンマナ(トーン&マナー)」についてお話しします。
「トンマナを合わせてください」というディレクターからの指示に
「トンマナ?どこまで合わせればいいんだろう?」
「具体的に何をすればいいの?」
と悩んだ経験はありませんか?
実は、トンマナは難しく考える必要はないんです。
ただし、きちんと理解して活用できないと、制作物の質が大きく変わってしまう重要な要素でもあります。
今回は、デザインの現場でよく使う「トンマナ」について、基礎知識から実践的な部分まで、分かりやすくご紹介していきます。これを読めば、明日からのデザイン制作がグッとラクになるはずですよ!
トンマナとは簡単に
トンマナは「トーン&マナー」の略です。
トンマナはWebサイトや広告、パンフレットなどの制作物全体の雰囲気を統一するためのルールのことです。デザインや文章のスタイル、色使い、レイアウトなど、見た目に関わるあらゆる要素を含みます。
分かりやすい例を挙げてみましょう。
例えば、コカ・コーラの赤と白のロゴや、Appleのミニマルでスタイリッシュなデザイン。これらを見かけたら、誰でもすぐにその企業のものだと分かりますよね?これは、色使いやデザインのルールがしっかり決まっているからこそ。このような「見た目の統一感」を作り出すための基準が、トンマナなんです。
トンマナは単なるデザインの統一ではありません。
企業やブランドの「顔」となるものなので、ターゲットユーザーへの印象や、伝えたいメッセージを考慮して決めていく必要があります。見た目の美しさだけでなく、戦略的な視点も大切なんです。
トンマナをする意味・なぜ必要なの?
トンマナをしっかり決めることで、制作する側とユーザー側の両方に大きなメリットがあります。
デザイン制作側のメリット
- デザインの作業時間が大幅に短縮できる(いちいち悩まなくて済む!)
- チームでの共有がスムーズになる
- 修正作業が減る(方向性のズレが少なくなる)
- 制作物全体のクオリティが安定する
- 外注時の説明もラクになる
ユーザー側のメリット
- 欲しい情報がすぐに見つけられる
- サイトの使い方が直感的に分かる
- ブランドの一貫性を感じられる
- 企業への信頼感が高まる
- 記憶に残りやすくなる
例えば、ECサイトの場合、商品画像の撮り方やレイアウトが統一されていると、ユーザーは商品情報を比較しやすくなります。
また、ボタンの色や配置が統一されていれば、「ここをクリックすれば商品が買える」という理解もスムーズです。
トンマナを合わせる・揃えるとは
「トンマナを合わせる」というのは、デザインの各要素を一貫性のあるルールで統一していくことです。ただ闇雲に「同じっぽく」するのではなく、戦略的に要素を決めていきます。
- 色使いを統一する
- フォントを揃える
- 写真やイラストのテイストを合わせる
- レイアウトの規則を決める
- 文章の書き方を統一する
これらのルールを決めて、制作物全体で守っていきます。
具体的に合わせる要素別で見ていきましょう。
デザイン・ビジュアル面でトンマナを合わせる
- 色使い:企業カラーやアクセントカラーを決める
- フォント:見出しや本文で使用するフォントを揃える
- 写真:撮影方法や加工方法を統一
- イラスト:タッチや色使いを合わせる
- アイコン:デザインの方向性を統一
- 余白:余白の取り方にルールを設ける
文章面でトンマナを合わせる
- 文体:です・ます調なのか、である調なのか
- 用語:同じものを指す場合は同じ言葉を使う
- 記号:句読点や括弧の使い方を決める
- 英数字:半角・全角の使い分けを決める
例えば、クールなブランドイメージを作りたい場合は:
- シャープな印象のサンセリフフォント
- モノトーンベースの写真
- 簡潔な文章
- 最小限の装飾
というように、全ての要素をクールなイメージに合わせていきます。
トンマナの決め方
トンマナの決め方は、以下の手順で進めていくのがおすすめです!
まずは大きな方向性を決めましょう。
- ブランドとして何を伝えたいか?
- ターゲットユーザーは誰か?
- どんな印象を持ってもらいたいか?
- 競合との差別化ポイントは?
基本方針が決まったら、各要素の具体的なルールを決めていきます。
色の使い方
- メインカラー:ブランドの基調となる色
- サブカラー:メインカラーを支える色
- アクセントカラー:強調したい部分に使う色
- 使用可能な色の範囲
フォント
- 見出し用フォント
- 本文用フォント
- サイズの使い分け(h1、h2、本文など)
- 太さの使い分け
画像
- 写真の明るさ・コントラスト
- フィルターの種類
- トリミングの比率
- 配置方法
レイアウト
- グリッドシステム
- 余白の取り方
- 要素間の間隔
- コンテンツの配置ルール
決めたルールは必ずガイドラインとしてまとめましょう。
ガイドラインに含める要素:
- 基本方針の説明
- 各要素の具体的なルール
- 実際の使用例
- NGパターン
- 運用ルール
要注意!トンマナの失敗例と対策
デザイナーがよく陥りがちな、トンマナの失敗例をご紹介します。
これらの例を知っておくことで、より良いトンマナ設計ができるようになりますよ。
1. 色使いがバラバラ
失敗例:
Webサイト内で、ページごとに異なるメインカラーを使用していたり、「企業カラー」のはずの青色が、実は微妙に色味の違う複数の青を使っているケースです。また、「映えるかな」と思って、アクセントカラーを次々と追加してしまい、結果的にサイト全体が雑多な印象になってしまうことも。
対策:
まずは使用する色のカラーパレットを明確に定義しましょう。HEXコードまで指定して、「このブルーが企業カラー」というように具体的に決めていきます。また、それぞれの色がどんな場面で使用されるのかも明確にしておくことが大切です。
2. フォントの不統一
失敗例:
「かっこいいフォントを見つけた!」と、見出しのフォントを頻繁に変えてしまうケース。または、読みやすさを考えずに装飾的なフォントを本文に使用したり、同じ階層の見出しなのに、ページによってフォントサイズが違っていたりする状態です。
対策:
見出し、本文など、用途別にフォントを厳選して限定します。また、h1からh6までの見出しや本文など、すべての文字サイズを一覧表にまとめ、規則性を持たせましょう。特に本文については、可読性を最優先したフォント選びを心がけます。
3. 写真やイラストの統一感なし
失敗例:
カメラマンに依頼した高品質な写真と、社内で撮影したスマホ写真が同じページで使われていたり、複数のイラストレーターに依頼したことで、イラストのタッチがバラバラになってしまうケース。写真の明るさや色味の調整も担当者によって異なり、統一感が損なわれています。
対策:
写真撮影時の環境や条件を細かく指定し、社内撮影の場合でも一定の品質を保てるようにします。写真加工については、統一したプリセットを作成して共有。イラストは、発注時に詳細な参考資料を提示し、テイストを揃えましょう。
4. レイアウトの一貫性がない
失敗例:
ページごとにグリッドが異なっていたり、見出しと本文の間隔、画像と画像の間隔など、余白の取り方に一貫性がありません。また、ページによって同じ種類のコンテンツの配置場所が変わってしまい、ユーザーを混乱させてしまうケースです。
対策:
サイト全体で統一したグリッドシステムを導入し、余白の大きさも数値できっちり定義します。コンテンツの配置についても、「ここには必ずこの情報が来る」という優先順位をしっかりと決めておきましょう。
5. 文体や表現がブレる
失敗例:
ページによって「です・ます調」と「である調」が混在していたり、同じ製品なのに記事によって表記が違っていたりします。また「Web」「web」「WEB」など、カタカナ・英字の表記が統一されていないケースも多く見られます。
対策:
サイト全体の文体ルールを明確に決めます。また、よく使用する用語については用語集を作成し、表記ゆれを防ぎます。英数字の半角/全角の使い分けなど、細かな表記ルールもチェックリスト化しておくと安心です。
6. 情報の優先順位が不明確
失敗例:
重要なお知らせも一般的な情報も同じような扱いになっていたり、見出しのデザインに階層が感じられず、情報の重要度が伝わりにくくなっています。また、強調したい部分の表現方法が担当者によって違うため、ユーザーが何に注目すべきか分かりづらい状態です。
対策:
情報の種類や重要度による階層を明確に定義し、それぞれの階層に応じた見出しのスタイルを決めます。強調表現についても、「この場合はこの表現を使う」というルールを具体的に設定しましょう。
トンマナとは?意味・デザインのトーンマナーを合わせるまとめ
トンマナは、ブランドの印象を決める大切な要素です。
「面倒くさい」と後回しにしがちですが、最初にしっかりルールを決めておけば、後の制作がグッと楽になります。
特に気をつけたいポイントは:
- ターゲットユーザーを意識すること
- 一貫性を保つこと
- 具体的なルールを決めること
- チーム全体で共有すること
明日からの制作で、ぜひトンマナづくりから始めてみてください。
最初は手間に感じるかもしれませんが、制作の効率アップはもちろん、クオリティの向上にもつながります。
きっと、「トンマナって便利!」と実感できるはずですよ。
皆さんの制作現場で、トンマナが活躍することを願っています!