Illustratorでチラシを作ろうと思って、最初の画面で手が止まってしまった……。
「A4って、アートボードをA4にして作るもの?」
「先輩からもらったデータは、大きい板の真ん中にトンボが付いていたけど……」
「ドキュメント設定で用意するって、どういうこと?」
そんなふうに、デザインを始める前の「用意の仕方」で迷っていませんか?
私はグラフィック・Webデザイナー歴25年の中で、チラシなどの印刷物もたくさん作ってきました。そして私自身の作り方は、後で紹介する「大きめのアートボードにトンボ」派です。でも、アートボードをA4にする作り方も、もちろん間違いではありません。
結論から言うと、大事なのは方式ではなく中身です。トンボ(トリムマーク)と塗り足しが正しく作られていれば、どちらの作り方でも入稿できます。 この記事では、2つの作り方の手順と違い、そして共通で大事なチェックポイントをまとめます。一緒に整理していきましょう!
そもそも、なぜ迷う?ドキュメント設定とアートボードの関係
まず、混乱のもとを整理しておきましょう。
Illustratorで新規ドキュメントを作るとき、幅と高さにA4(210×297mm)を指定しますよね。すると、そのサイズがそのままアートボードになります。 つまり「ドキュメント設定でA4を用意する」と「アートボードをA4にする」は、実は同じ入口なんです。
では何が選べるのかというと、その先です。
- アートボード=仕上がりサイズのまま、デザインしていくか
- アートボードを仕上がりより大きく取って、内側に仕上がりの目安(長方形とトンボ)を置いてデザインするか
この2通りがある、という話なんですね。用語そのものの意味は、既存の記事「Illustratorのアートボードとドキュメント設定」でも解説しているので、よければあわせて読んでみてください。
作り方1:A4アートボード派
1つ目は、新規ドキュメントでA4を指定して、そのアートボードの上でそのままデザインする方法です。
用意の仕方
- 新規ドキュメント:幅210mm × 高さ297mm(A4)
- カラーモード:CMYK
- 裁ち落とし(塗り足し):上下左右3mm
この方法の良さは、仕上がりの形がそのまま目に見えている分かりやすさです。アートボードの端がそのままチラシの端になるので、サイズ感で迷うことがありません。
向いている場面
- ネット印刷のテンプレート(A4サイズのひな形)を使うとき
- 表裏や複数ページなど、アートボードを並べて管理したいとき
- 「アートボード=仕上がりサイズ」で入稿先が指定しているとき
入稿データを作るときに、PDFの書き出し設定でトンボ(トリムマーク)を付けるかどうかは、入稿先の案内に合わせてくださいね。「トンボは付けないでください」という印刷所もあれば、「付けてください」という印刷所もあります。ここは自己判断ではなく、入稿先のガイドを見るのが安心です。
作り方2:大きめアートボード+トンボ派(私の作り方です)
2つ目は、私がいつも使っている作り方です。
用意の仕方
- 新規ドキュメント:A3サイズ(297×420mm)のアートボードを用意します
- その中央に、A4サイズ(210×297mm)の長方形を描きます。これが仕上がりの位置です
- デザインの背景や端まで届かせたい絵柄は、長方形の外側3mmまで伸ばします。つまり、塗り足しまで含めた範囲は216×303mmになります
- 長方形を選んだ状態でトリムマークを作成すると、仕上がり位置にトンボが付きます(メニューの場所や名前はバージョンで少し違うことがあるので、お使いのバージョンで確認してくださいね)
この作り方の良さ
- アートボードに余白があるので、周りにメモ、色チップ、没になった案などを置いて作業できます
- トンボが常に見えているので、「仕上がりでどこが切れるか」を意識しながらデザインできます
- 印刷の現場で昔から使われてきた形なので、データを見慣れている方には伝わりやすい作りです
「こんなに大きい板のまま出して、入稿できるの?」と心配になるかもしれません。でも大丈夫です。トンボが付いていれば、印刷する側には「どこが仕上がりか」が伝わります。 私はこの形のまま入稿していて、これまで問題になったことは一度もありません。
2つの作り方を比べてみると
| 項目 | A4アートボード派 | 大きめアートボード+トンボ派 |
|---|---|---|
| 仕上がりの分かりやすさ | アートボードの端=仕上がりで直感的 | トンボと長方形で位置を確認する |
| 作業スペース | アートボードの外にも置けるが、仕上がりと混ざりやすい | 周りにメモや色チップを置きやすい |
| テンプレート利用 | ネット印刷のテンプレートと相性が良い | テンプレート指定がある場合は合わせにくい |
| 複数ページの管理 | アートボードを並べて管理しやすい | 1枚ずつファイルが分かれがち |
| 入稿 | 入稿先の指定どおりに書き出す | トンボで仕上がりが伝わるので、そのまま入稿できる |
どちらが優れている、というより、入口と作業のしやすさの違いだと思ってください。
どっちアートボードを選べばいい?判断の流れ
迷ったときは、この順番で考えてみてください。
1. 入稿先のガイドやテンプレート指定があるか確認する
指定がある場合は、それに合わせるのが一番安心です。作り方を統一してもらうことで、印刷所側のチェックがスムーズになるためなんですね。
2. 指定がなければ、自分が作りやすい方で大丈夫です
「仕上がりの端が見えていた方が安心」という方はA4アートボード派、「周りに資料を置いて考えたい」という方は大きめボード派。どちらを選んでも、次に紹介する共通のポイントが守れていれば、入稿データとしては成り立ちます。
途中で「やっぱり作り方を変えたい」と思ったら、変えても大丈夫ですよ。アートボードのサイズは後から変更できますし、デザインそのものを作り直す必要はありません。
どちらのアートボードの作り方でも、共通で大事なこと
方式が違っても、入稿前に見てほしいポイントは同じです。
ここだけは少し時間をかけてチェックしてみてくださいね。
- 塗り足しは3mm
紙の端まで絵柄があるデザインは、仕上がりの外側3mmまで絵柄を伸ばしておきます。断裁のわずかなズレで白いフチが出てしまうのを防ぐためです - カラーモードはCMYK
印刷物はCMYKが基本です。RGBのままだと、印刷で色がくすんで見えることがあります - 画像の解像度は300〜350dpiが目安
写真などの画像は、配置する大きさでこのくらいあると安心です。解像度の考え方は、解像度(dpi・ppi)の記事でも詳しく解説しています - フォントはアウトライン化
文字を図形化しておくと、印刷所の環境に同じフォントがなくても崩れません。アウトライン化する前のデータは、別名で残しておくと後から文字を直せて安心ですよ - 入稿前にPDFで確認
書き出したPDFを開いて、トンボの位置、塗り足し、文字化けがないかを見てみましょう。書き出し形式の使い分けは、ファイル形式の記事も参考にしてみてください
よくある質問
Q. アートボードが仕上がりより大きいと、印刷所に怒られたりしませんか?
A. トンボで仕上がり位置が伝わる形になっていれば、基本的には大丈夫です。私自身、その形で入稿してきました。ただ、印刷所によっては「アートボードを仕上がりサイズにしてください」と指定している場合もあります。その指定があるときは、そちらに合わせてくださいね。
Q. 最初にドキュメントを作り直さないとダメですか?
A. 作り直さなくて大丈夫です。アートボードのサイズは途中からでも変更できますし、トンボは後から付け直せます。今あるデータを活かして、入稿の形に整えていきましょう。
Q. 塗り足しとトンボは、両方とも必要ですか?
A. 役割が違うので、両方あると安心です。塗り足しは「絵柄を断裁位置より外まで伸ばすもの」、トンボは「どこで断裁するかを示す目印」です。ただし、トンボの付け方には入稿先の指定がある場合もあるので、最後は入稿先のガイドで確認してみてください。
まとめ
チラシの用意の仕方は、2通りあります。
- アートボードを仕上がりサイズ(A4)にして作る
- 大きめのアートボードに、仕上がりの長方形とトンボを置いて作る
どちらが「正解」という話ではなく、トンボと塗り足しが正しく作られていて、入稿先の指定に合っているかが大事なところです。指定がなければ、自分が作りやすい方を選んで大丈夫ですよ。
まずは今作っているチラシで、塗り足し3mmとトンボの位置だけでも確認してみてください。
それができたら、用意の仕方で迷う時間はぐっと減るはずです。
一緒に一歩ずつ進めていきましょう。私も応援しています!

