AIに頼んだら、思っていたよりずっといいバナーができた。
「これ、ポートフォリオに入れてもいいのかな」
「AIで作ったって書いたら、落とされるんじゃないかな」
嬉しい反面、そこで手が止まってしまっていませんか?
私はグラフィック・Webデザイナー歴25年、ポートフォリオの添削やサポートもしてきました。
AIが身近になった今、この質問を受けることが本当に増えました。
AIへの不安そのものについては「デザイナーの仕事はAIでなくなる?」の記事で整理したので、ここでは「ポートフォリオに入れていいのか、入れるならどう説明するか」に絞ってお話ししますね。
先に結論をお伝えします。ほぼAI生成の作品、つまりAIが出したものをほぼそのままの形にした作品は、ポートフォリオには載せません。
一方で、AIを一部に使いながら、自分の判断と仕上げが入っている作品は、載せて大丈夫です。
線引きは「AIをどこまで使ったか」ではなく、「自分が選んで、直して、説明できるか」です。
線引きは「使った量」ではなく「自分の判断が入っているか」
このサイトでいつもお伝えしている合言葉は、AIは「数を出す係」、人は「選んで責任を持つ係」です。
ポートフォリオは、その「選んで責任を持つ力」を見せる場所です。
だから、作品ごとに次の3つに分けて考えてみてください。
| AIの使い方 | ポートフォリオへの入れ方 |
|---|---|
| アイデア出しのみAI(ラフ案・構成のたたき台) | 通常の作品として入れてよい |
| 素材生成にAI+選ぶ・直す・組み立てる・仕上げは自分 | 入れてよい。AIの使用範囲と自分の担当を説明に書く |
| ほぼAI生成(AIの出力をほぼそのまま使用) | 載せない |
順番に見ていきますね。
アイデア出しのみAIなら、そのまま入れて大丈夫です
リサーチの整理、方向性の違う案をたくさん出してもらう。
キャッチコピーのたたき台を作ってもらう。
こういう使い方をして、実際の制作は自分の手で進めた作品は、通常の作品として扱って大丈夫です。
昔からデザイナーは、参考資料を集めたり、他人に壁打ちをお願いしたりしてきましたよね。
アイデア出しのAIは、その延長です。
説明文にいちいち書く必要まではありません。
ただ、面接などで聞かれたときに「案出しにAIを使って、ここから自分で選びました」と答えられるようにはしておいてくださいね。隠すような使い方ではない、というのがポイントです。
素材生成にAIを使い、仕上げは自分なら、入れて大丈夫です
バナーの背景画像や、イラストの素材をAIで生成して、選ぶ・直す・組み立てる・仕上げる工程を自分でやった作品。これは、入れて大丈夫な作品です。
大事なのは、AIを使ったことを説明に正直に書くことです。
説明に書いてほしい4つの要素
- 使ったツール名(例:画像生成に〇〇を使用)
- AIに任せた部分(例:背景画像の生成、色違いのバリエーション出し)
- 自分が決めた・直した部分(例:3案から選んだ理由、文字組みと余白の調整、色調の修正)
- なぜその案を選んだか(例:応募先のブランドの色味に一番近かったから)
この4つが書いてあると、読む側には「この人はAIに作らせただけじゃなくて、選んで、整えて、出している」と伝わります。説明文の型そのものは「ポートフォリオの作品説明の書き方」の記事でも扱っているので、ここではAI作品に必要な要素だけに絞りますね。
説明文の例
良い例
「バナーの背景画像の生成にAIを使いました。出した3案の中から、ブランドの色味に一番近いものを選び、文字組み・余白・ロゴの配置はIllustratorで自分で組み立て、色調を調整して仕上げました」
伝わりにくい例
「AIで作ったバナーです」
……これだけだと、あなたが何をしたのかが分かりません。
反対に、AIを使ったことを書かずに「コンセプト立案から制作まで一人で担当しました」のように書くのも、後から分かると信頼を落としてしまうので避けたいところです。
書くか書かないかではなく、「どこを任せて、どこを自分で決めたか」を分けて書く。それだけです。
ほぼAI生成の作品は、載せないでください
ここは、はっきりお伝えします。AIが出したデザインを、ほぼ手を入れないまま「自分の作品」としてポートフォリオに載せるのは、やめておきましょう。
理由はシンプルです。ポートフォリオで見られているのは「選んで責任を持つ力」の方だからです。
AIがデザインしたものに、自分で選んだ判断も、直した仕上げも入っていないなら、それはまだ「自分の作品」にはなっていないんですよね。AIは数を出す係。その中から選んで、整えて、説明できる形にして初めて、人の仕事になります。
それに、実務との落差も心配です。その作品を見て「このレベルができる人」と思われて仕事が決まったら、次はAIの出力そのままでは済まない場面が来ます。
面接で「これはどう考えて作ったんですか?」と聞かれて答えられないのも、つらいですよね。
ただ、その生成結果を捨てる必要はありません。気に入った出力があるなら、それを素材やたたき台にして、レイアウトを組み直す、文字組みを自分で作る、色と余白を整える。そこまで手を入れたものは、もう「素材生成にAIを使った作品」として載せられる側に入ります。
練習の記録として手元に残しておくのも、もちろんアリですよ。
ポートフォリオに載せる前に確認したい3つのこと
- ツールの利用規約と商用利用の可否
生成した画像や文章を仕事で使える条件は、ツールごとに違います。無料プランと有料プランで扱いが変わることもあるので、ポートフォリオに入れる前に、使ったツールの公式案内で一度確認してみてください。 - 応募先にAI利用の規定がないか
就職・転職の応募要項や、コンペ・課題提出のルールで、AI利用の扱いが決められている場合があります。規定がある場合は、そちらが優先です。 - クライアントワークを想定した作品の扱い
実在の会社や商品を題材にした自主制作でAI素材を使う場合は、実績と誤解されない書き方(自主制作であること、AIの使用範囲)を添えてください。既存のキャラクターや他人の作風に寄せすぎた生成物は、権利の面でも避けておくのが安心です。
採用側はポートフォリオの「判断の過程」を見ています
一般論としてお伝えすると、見る側が気にしているのは「AIを使ったかどうか」そのものよりも、「この人は、自分の仕事の範囲を分かっているか」です。
AI利用を正直に書いて、選んだ理由と直した部分が見える説明は、むしろ「実務でもこうやって使うんだな」という安心感につながります。
反対に、全部AI生成なのに自分で一から作ったように見せていると、他の作品まで「これは本当かな?」と見られてしまうことがあります。
1作品の見せ方で、ポートフォリオ全体の信頼が下がってしまうのは、もったいないですよね。
ポートフォリオ提出前のチェックリスト
- □ ほぼAI生成のまま載せている作品はない
- □ AIを使った作品には、ツール名・任せた部分・自分が決めた部分が書いてある
- □ 「なぜその案を選んだか」が一文で言える
- □ 使ったツールの商用利用の条件を確認した
- □ 応募先にAI利用の規定がないか確認した
- □ 自主制作の作品は、実績と誤解されない書き方になっている
よくある質問
Q. AIで作ったイラストをそのまま作品として載せるのは、やっぱりダメですか?
A. イラストそのものが生成結果のままなら、載せない方がいいです。
ただ、そのイラストを素材として使い、自分でレイアウトや文字組みを組み立てて1つのデザインに仕上げたものなら、「素材生成にAIを使った作品」として載せられます。
分かれ目は、完成形の中にあなたの判断と仕上げが入っているかどうかです。
Q. AIを使ったことを書くと、不利になりませんか?
A. 使用範囲と自分の担当が分かる書き方なら、不利になるとは私は考えていません。
実務でもAIを使う場面は増えていて、「どこを任せて、どこを自分で決めたか」を説明できることは、そのまま仕事での使い方の証明になります。
心配な場合は、応募先の規定だけ先に確認してみてくださいね。
Q. 昔作った作品にAI素材が入っているか、あいまいなものがあります。
A. 思い出せる範囲で大丈夫です。「一部の素材生成にAIを使用」と、正直に書ける範囲で添えてください。どうしても分からない作品は、無理に断定せず、説明を短くするのも一つの方法ですよ。
ポートフォリオにAIで作った作品を入れていい?まとめ
AI作品をポートフォリオに入れていいかの線引きは、「自分が選んで、直して、説明できるか」でした。
アイデア出しのみなら通常の作品として。
素材生成にAIを使っても、判断と仕上げが自分なら入れて大丈夫、その代わり使用範囲は正直に書く。
そして、ほぼAI生成のものは載せない。
これが、私のおすすめする線引きです。
AIはライバルではなく、相棒です。
数を出してくれる相棒がいるなら、あなたは「選ぶ・整える・伝える」という、デザイナーの一番大事な仕事に集中できます。その判断の跡こそが、ポートフォリオで一番見せたいものなんですよね。
まずは今ある作品を3つの分け方で仕分けするところから、始めてみてくださいね。応援しています!ポートフォリオ全体の作り方は、親記事「未経験デザイナーのポートフォリオの作り方!作品選びから完成まで6ステップ」でまとめています。

AI作品の線引きはできても、「自分のポートフォリオ全体で、次に何を伸ばせばいいのか分からない」という方へ。仕事につながるデザイナーになるための「8つの力」無料診断で、今の自分の強みと、次に伸ばすべき力を整理してみませんか。作品の見せ方だけでなく、これから身につける力の順番まで見えてきます。

